024 なんの仕事をしているの?


「なんの仕事をしているの?」と訊かれると、
2年前までのわたしは「図書館で…働いています」と
あんまりはっきりしない調子で答えていました。

そう答えるとたいがいの人は
「え〜っ!図書館?素敵ですね」
「本が好きなんですか?」
などと言ってきます。

わたしは、これらの言葉たちが
「あなたは図書館という場所で働けて、きっと幸せでしょう?」と
言っているように聞こえました。


ぜんぜん幸せじゃない

ほんとうはそう思ってました。
だけど、その時のわたしはそう言えなかった。


月日が経ち、わたしはだれかに
「図書館で働くことはわたしにとってぜんぜん幸せじゃない」
と言う代わりに、
退職届を出すという行為によって自分の気持ちと向き合いました。

次の仕事の目処はまったく立っておらず、
なんの仕事をしたいかもよくわからない。
貯金はあるけど、家賃を払い続けたらいずれなくなるはず。
そんな無謀な行為でした。





「手放せばなにかが手に入る」
「なにかを手に入れるには手放さなければならない」
とはよく言ったもので、
幸運なことにわたしもその例外ではなく、
しばらくすると雪が降ってくるようなひらめきで、次にやりたい仕事を見つけました。

さいきんわたしが読んでいる、
牟田都子さんの『文にあたる』(2022年 亜紀書房)
は牟田さんがご自身の仕事について語っている本ですが、
契約先の会社の社員からすすめられ、読みはじめた本です。

「奥付を見てほしい」
そう社員に言われ見てみると、牟田都子という名前の下には
「図書館員を経て出版社の校閲部に勤務。2018年より個人で書籍・雑誌の校正を行う」
と書かれています。
そう、牟田さんは「本を読むことを仕事に」されている校正者です。





「なんの仕事をしているの?」と訊かれると、
いまのわたしは「校正・校閲の仕事ってご存知ですか?」
とはっきり応えます。

校正者と名乗るにはキャリアもスキルも発展途上で、
日々は具体的な困難であふれていますが、
わたしはこの仕事を通して人に必要とされることに
とても幸せを感じています。