「なんの仕事をしているの?」と訊かれると、
2年前までのわたしは「図書館で…働いています」と
あんまりはっきりしない調子で答えていました。
そう答えるとたいがいの人は
「え〜っ!図書館?素敵ですね」
「本が好きなんですか?」
などと言ってきます。
わたしは、これらの言葉たちが
「あなたは図書館という場所で働けて、きっと幸せでしょう?」と
言っているように聞こえました。
ぜんぜん幸せじゃない
ほんとうはそう思ってました。
だけど、その時のわたしはそう言えなかった。
月日が経ち、わたしはだれかに
「図書館で働くことはわたしにとってぜんぜん幸せじゃない」
と言う代わりに、
退職届を出すという行為によって自分の気持ちと向き合いました。
次の仕事の目処はまったく立っておらず、
なんの仕事をしたいかもよくわからない。
貯金はあるけど、家賃を払い続けたらいずれなくなるはず。
そんな無謀な行為でした。
*
「手放せばなにかが手に入る」
「なにかを手に入れるには手放さなければならない」
とはよく言ったもので、
幸運なことにわたしもその例外ではなく、
しばらくすると雪が降ってくるようなひらめきで、次にやりたい仕事を見つけました。
さいきんわたしが読んでいる、
牟田都子さんの『文にあたる』(2022年 亜紀書房)
は牟田さんがご自身の仕事について語っている本ですが、
契約先の会社の社員からすすめられ、読みはじめた本です。
「奥付を見てほしい」
そう社員に言われ見てみると、牟田都子という名前の下には
「図書館員を経て出版社の校閲部に勤務。2018年より個人で書籍・雑誌の校正を行う」
と書かれています。
そう、牟田さんは「本を読むことを仕事に」されている校正者です。
*
「なんの仕事をしているの?」と訊かれると、
いまのわたしは「校正・校閲の仕事ってご存知ですか?」
とはっきり応えます。
校正者と名乗るにはキャリアもスキルも発展途上で、
日々は具体的な困難であふれていますが、
わたしはこの仕事を通して人に必要とされることに
とても幸せを感じています。