弁当を誰と食べるかということについて、丹羽ハルカが実は少なからぬプレッシャーを感じていたことを、ぼくは今日知った。プレッシャーを感じなくなった今日になってそのことに初めて気がついたのだった。
川上弘美『某』2021 幻冬舎文庫(42)
じぶんのほんとうの気持ちは
何らかの状況に遭遇したり
自ら行動をしたりしたときに
とつぜん明らかになることがある、と思うこのごろです
*
じぶんはなんとも思っていない、平気だ、と思いつづけていたのに
“その人”の顔を見たら
涙がぽろぽろ出てきたり
ある場所に行ったら
じぶんがなにを恐れていて
じぶんがなにを大事にしていたかがわかったり
ぜったいにこうだ!と思って行動したことが
真逆のじぶんの気持ちを教えてくれたり
*
わたしたちは
じぶんのほんとうの気持ちを隠したり、偽ったりすることに
とても長けています
*
じぶんのほんとうの気持ちを知っても
げんじつの物事は変化するとは限りません
“その人”の病気がとつぜん治ったり
じぶんに都合の良い環境に変わったり
魔法のような技術が発明されたりすることはありません
(可能性はゼロではないけれど)
だけどじぶんは変化します
こころの奥底で見つけてもらえるのを待っていた「じぶん」を撫でたとき
わたしたちは癒されてゆきます
「ほんとうの気持ちに出会うのはむずかしい」
そう思うと、もどかしく感じるかもしれません
だけどそのことを知っていれば
いま、こうだ!と思っていることが
いつかひっくり返るかもしれない、と思える
それは人生の希望とよんでもいいのではないでしょうか